特集 フォトエッセイ 「青い海と白い砂」 −113系のある風景− Page 11
顔。いろいろな顔がある。笑った顔、 怒った顔、悲しい顔、すました顔。 車にも顔がある。形とヘッドライト の形が作り出す、さまざまな顔。も ちろん、列車にも顔がある。彼の顔 はどんな顔だろうか。どことなく生 真面目で、うそをつかないような、 感情をあまり出さない顔だろうか。 貫通扉のあるこの顔が昔から好きだ った。理由は考えてもよくわからな い。でもやはり、都会を走る通勤型 車両にはない雰囲気があるからだと 思う。 新しく作られる車両の顔はどこか違 う。 「かっこいい」のかもしれないが、 何か「優しさ」がない。どれもこれ も今のこの世の中の雰囲気がそのま ま顔に出てしまっている感じがする。 彼は今日もすました顔で昭和の香を 乗せながら走っている。昭和の時代 はよかったな、と思うことも多い昨 今だが、では昭和の時代の生活に戻 れるか・・・。たぶん無理だろう。 今、これを書いていることさえ、昭 和の時代にはありえなかったこと。 |
|
デジタルカメラだってなかった。デ ジタルカメラがなかったら今、こう いう写真を撮っているか。たぶん否 である。最近、そんなジレンマに陥 っている自分がいる。でも、そんな ことはお構いなしに、彼は淡々と人 を運ぶ。 |
|
Page 12へ |
Copyright YUMEKI |
|